第67章 引き際を見極める

有川菜央はその視線にひと撫でされただけでびくりと肩をすくめ、思わず一歩退く。そのまま身を寄せるように、佐伯薫の胸の中へ逃げ込んだ。

佐伯薫の瞳がきらりと揺れ、瞬時に「いいお母さん」の仮面を被る。菜央の背中をそっと撫でながら、顔を上げて佑奈を見た。複雑な表情に、いかにも傷ついたような委屈を滲ませて。

「佑奈さん……何か、勘違いなさってませんか? 菜央はまだ小さくて、分別もつきません。そんなふうに、きつく言わないであげて……」

菜央も薫の合図を受け取ったのだろう。腕の中に隠れたまま、怯えた声を絞り出す。

「パパ、ママ……けんかしないで……わたし、離婚してほしくないの……家族、いっしょがい...

ログインして続きを読む